第6回スナック研究会を開催しました
過日、4月末に第6回スナック研究会を開催しました。今回の報告は行政学者と憲法学者の2人によるもので、内容は以下の通り。
● 伊藤正次(首都大学東京・行政学)「行政から見たスナック--夜の社交を仕切る規制の多元性」
前回の亀井報告(刑法の観点から)と合わせ、規制対象としてのスナックの多面性が明らかになる報告で、大変刺激的でした。規制上の所謂「遊興」概念に関する細かな議論など、さすが今回の報告者お二人によるもので、実に興味深いお話でした。
それにしても、スナックに対する行政側からの規制は実に多岐にわたる/多元的なもので、その点からも「スナック」自体の業態としての〈定義〉が困難である理由が改めて浮き彫りにもなった感もありました。保健所、警察署、消防署、税務署など、実にさまざまな行政機関との関わりが、実に良く整理された議論でもありました。
研究会のあとは、いつもの通り河岸を変えずに談論風発が引き続く、楽しい夜を過ごしたのでした。
なお、余談ではありますが、先月、本研究会主宰者の谷口が、郷里の地元紙・大分合同新聞から「大分県出身者で東京で活躍しているひと」を紹介する欄のインタビューを受け、紙面において当スナック研究会も大きく紹介されました。一面の半分という驚くほど大きな扱いで、有り難い限りです。
現在、別府は先の地震で被災しており、このGW中も観光客が減ったりと、夜の街も大変なことになっていますが、現時点では地震もかなり収まって来ているようです。出身者としては大変こころを痛めているところで、一刻も早く事態が落ち着くことを祈ると共に、微力ながら、ふるさとの復興に何かお手伝い出来ないかと思うばかりです。
当スナ研も残すところ2回。次回は、がらりと雰囲気を変えて、「歴史」の観点からスナックとは何かに迫ります。
第5回スナック研究会を開催しました
2月某日、第5回スナック研究会を開催しました。今回の報告者は、慶應義塾大学の亀井源太郎先生。ご専門の刑法の観点から「夜遊びの適正化と平成26年風営法改正」という題目で、お話し頂きました。今回は、白水社の編集者・竹園公一朗さんにもご臨席頂きました。(主宰の谷口が当日になって著しい体調不良に陥り欠席だったため、以下は後日お送り頂いた当日の出席者の方からのメモによるご教示に拠ります。)
内容は、前史として風俗営業取締りの歴史的起源から始まり、風俗行政研究会などの議論も踏まえた上での、平成27年風営法改正などに及びました。
こぼれ話的なトピックとして、LEX/DB(判例データベース)を用いた「刑事事件にみるスナックの発祥」といった話題も上がり、いつも通りの活発な質疑応答が行われました。
冒頭に記した通り、今回で5回目の研究会となりますが、これまで月例で続けて来た本研究会、次回からは隔月で、4月・6月と開催し、7月下旬をもって、ひとまず最終回を迎える予定となっております。
なお、上記とは別途、昨年12月に行われた第3回研究会について、全国スナック情報「スナッカー」様より、参加レポートを掲載して頂きました。第3回当日にもゲスト講演者としてお世話になった平本精龍様には改めて御礼を申し上げる次第です。ありがとうございます。
第4回スナック研究会を開催しました
2016年1月中に、第4回研究会を開催しました。
今回の報告者は、苅部直先生。お題は「スナックと「社交」」で。いつも通り、小一時間ほどの報告のあと、活発な質疑応答が交わされました。
報告では、スナック(バー)が、草創期には所謂「不良の溜まり場」あるいは「ディスコ」的なものだったのでは?という話から始まり、庄司薫の『ぼくの大好きな青髭』(1977)や柳田國男、はたまたマイケル・イグナティエフまで、古今東西をまたにかけた興味深い議論が展開されました。
或る種の「スナック小説」としての『ぼくの大好きな青髭』という切り口は、とても面白かったのですが、この点については最近刊行された御厨貴・山岡龍一編『政治学へのいざない』(放送大学テキスト)の第6章~10章・苅部先生ご執筆部分に庄司薫の一連の作品についての言及があり、こちらも大変面白いので、ぜひ、どうぞ。書誌情報がウェブ上で出ないので、以下を参考までに。
当日は、たまたま研究会代表の谷口が誕生日だったこともあり、会場を提供して下さっているスナックの方から、お花やケーキなども頂いてしまい、恐縮でした(ありがとうございます)。
なお、同じく1月中に大阪のサントリー文化財団に参上して、本研究助成の中間報告を行い、報告後、せっかくなので北新地の盛り場をめぐって帰京したのでありました。
というわけで、今年もスナ研を宜しくお願い致します。
第3回スナック研究会を開催しました
過日、都内某所スナックで第3回研究会を開催しました。今回は外部からのゲスト講師として、全国スナック情報サイト「スナッカー」を運営されている平本精龍さんをお招きし、「近年のスナックの動向とスナックにまつわるデータ」ということでお話し頂きました。
以下、「スナッカー」のサイト情報と平本さんへのインタビュー記事など、参考までに。わたし自身(代表・谷口)も、これまで当該サイトを利用し、初めての土地などでスナックを訪れる際の参考にさせて頂きましたが、とても良いサイトです。大変良心的な運営をされており、お客側・お店側のいずれの観点からもオススメのサイトですので、この年末の二次会などの際に、ご活用下さい。
「スナッカー」で蓄積された極めて豊富なデータと共に、平本さんご自身の体験談も織り交ぜ、そもそも「スナックとは何か」という話から始まり、「スナック経営者の世代層」・「最近の傾向(ニュースナック)」・「客層」・「良い店の見分け方」・「スナックでの作法」・「スナックの価格帯」・「スナックの今後」・「サイト立ち上げの経緯」・「店名について」・「都道府県スナック店舗数」などなど実に多岐にわたるお話を頂き、活発な質疑も行われました。
年内最後の研究会となりましたが、最後はカラオケでの締めということで。来年も宜しくお願い致します。
第2回スナック研究会を開催しました
11月下旬、第2回スナック研究会を都内某所のスナックで開催しました。今回の報告者は研究会メンバーの高山大毅さんで、お題は「「夜の公共圏」と本居宣長」。
大国学者・宣長とスナックに何の関係が!?となるのが正常な反応ですが、宣長の「物のあはれ」を知る「人情」とそうでないものとの対比を通じて、スナック紳士のあり得べき姿に関して、実に興味深い報告と質疑応答が展開されました。・・・下の写真は谷口がインドネシア出張の際に買って来た当地のバティックを来て、ムスリムの伝統帽(peci)を被るメンバー。
『紫文要領』、『石上私淑言』、『不尽言』、『徒然草文段抄』、『風流志道軒伝』、『案内手本通人蔵』など、めくるめく古典世界の扉が開かれる夜でした。
スナックブーム?
ここ最近、雑誌などでスナック特集が立て続けに組まれている。一番最近のものとしては『BRUTUS』の特集「スナック好き。」
BRUTUS(ブルータス) 2015年 11/15号 [雑誌]
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読みどころは、玉袋筋太郎と都築響一の記事と、ポータルサイト「スナックガイド」の運営者・宇野倫史による「ご当地スナック事情。」のページ。宇野氏は最近、東スポに「スナック侍放浪記」も連載中で、要注目。東陽片岡先生がバイト?しているスナックが載っていたのがツボった。
同じマガジンハウスからなのだが、半年くらい前に『HANAKO』もムックで「スナックにおいでよ。」という特集をしている。マガハはスナック好きなの???
Hanako FOR MEN vol.16 スナックおいでよ。 (マガジンハウスムック)
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この他には、雑誌媒体ではないが、玉袋筋太郎の旺盛なスナック啓蒙活動の一環として、以下のようなものも。
雑誌の方を読んでの全体としての感想は、少しサブカル的に消費されてるかな、という印象も。スナ研の方で、更に新たな地平を拓ければと思う。
第1回スナック研究会を開催しました
過日、都内某所スナックを会場に、「スナック研究会」の記念すべき第1回目を開催しました。これまで準備会合を何度かやって、やっとココまで来ました。乾杯のビールはサントリーの「ザ・プレミアム・モルツ」で。
冒頭、代表の谷口より、これまでのスナック(研究)の来歴や現状、そして今後の展望に関する簡単な報告を含めた「開会の挨拶」から始まり、今後、2016年7月まで続く本研究会での各自の研究分担・内容に関するブレインストーミング的なやり取りが活発に行われました。
大変興味深い話も多かったのですが、詳細は成果物などで明らかにしたいと思います。
次回は来月11月下旬、高山大毅さんから本居宣長などを用いたスナック作法と社交のあり方に関する興味深い報告が行われることとなりました。12月は、専門家?のゲストの方を招聘してお話し頂くことに。
上記、研究会と事務連絡・調整ののち、そのまま饗宴へと流れ込み、やはりサントリーのウィスキーを嗜みつつ、研究会は深夜まで続いたのでした。
最後の写真は、会場を提供して下さったスナックのママから代表の谷口が記念に頂いた蝶タイを締めた姿です。「今後、カウンターの中に入る機会につけて下さいネ」とのこと。ママ、本当に有り難うございました!
スナック読書案内
スナックに関する書籍等で、比較的入手の容易なものを中心に以下、読書案内的に。
そもそも「スナック」とは何なのか?という点については実のところ詳細な説明が必要なのだが、それについてはスナック研究会の成果物(書籍等)で改めて明らかにしたい。
1.都築響一(2010)『天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~』廣済堂出版
天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~ (読んどこ! books)
- 作者: 都築響一
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現代の日本のスナックについて語る上で決して落とすことの出来ない一冊。余りの分厚さに頭上に落としたら死ぬかも、という点でも落とすことの出来ない一冊。本の寸法は、19 x 13.4 x 5.8 cmであり、868ページ・・・。わたしは、この本をトイレ文庫に置いて3回くらい読んだが、とにかく圧巻。内容は実際にスナックを巡り、ママの話を聞き書きしたものだが、人生色々にも程があり、目眩がする。とにかく、先ずはこれを読んでから。同著者で最近のものとしては、以下なども。
2.都築響一(2011)『東京スナック飲みある記~ママさんボトル入ります!』ミリオン出版
3.玉袋筋太郎(2012)『浅草キッド玉ちゃんのスナック案内』エンターブレイン
4.玉袋筋太郎他(2014)『スナックあるある:この素晴らしき魑魅魍魎の世界』講談社
3は、全日本スナック連盟(全ス連)まで立ち上げた玉袋筋太郎による啓蒙的な著作。長年のスナックへの愛を感じつつ、スナックの基本のキを学べる良書。4の挿絵は東陽片岡先生!
5.東陽片岡(2010)『レッツゴー!!おスナック』青林工藝社
黙って読めとしか言いようがないのだが、スナックの極北を描ききった名作。わたしは、このマンガの中に出て来るクソ暑い真夏の日中は畳部屋でダラダラ汗を流し、夜になると「ゴキブリのように」夜の巷へと這い出すオッサンにシビれた。
なお、女性によるものとして以下のようなものもある。サブカル風味も入ったニューウェイブか。
6.山田なおこ(2008)『山田なおこ~写真集『スナック』リトルモア
7.岡本まーこ他(2014)『ほろよいスナック女子:今夜もママに乾杯!』竹書房
ほろよいスナック女子 今夜もママに乾杯! (バンブーエッセイセレクション)
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7.沢田高士(2003)『誰も教えてくれない「スナック」商売の始め方・儲け方』ぱる出版
スナックを始めたいひとは以下などを。実際は近くの行政書士などに相談しても良いかと思う。
誰も教えてくれない「スナック」商売の始め方・儲け方―地元商店街・繁華街の「安らぎ憩い」のスポット
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番外.糸井重里(1984)『スナック芸大全(角川文庫)』角川書店
ちなみにこの糸井の本は、スナックとはほとんど関係ない。
以下は、関連する有益なサイトなど。
●「玉袋筋太郎のナイトスナッカーズ」[テレビ番組]
→ BS11チャンネルで2011年より放映開始、その後JCOMチャンネルで新シリーズ「リターンズ」が2013年12月より開始)
【玉袋筋太郎のナイトスナッカーズ・リターンズ】番組公式ページ | MYJCOM テレビ番組・視聴情報、動画配信が満載
● 玉袋筋太郎の全日本スナック連盟
● 全国スナック情報サイト・スナッカー
「スナック研究会」ブログ開設のご挨拶
共同研究者の荒井先生のお力を借りて、スナック研究会(略称:スナ研)のサイトを立ち上げ、同時にブログも開設しました。
公式サイト:スナック研究会
月例の研究会に関しては、基本的にクローズドで行ってゆく予定ですが、随時、開催後の情報などもアップしてゆくことが出来ればと思っています。
スナックに関しては、既に都築響一氏、玉袋筋太郎氏のような優れた先達が居ますが、本研究会では、それらの素晴らしい仕事を基礎としつつ、更にわが国におけるスナック文化振興の一端を担うことが出来ればと考えています。
天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~ (読んどこ! books)
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本研究会では、今後、わが国のスナックに関連する有益な情報発信を行ってゆければと思っていますので、ご愛顧のほど宜しくお願い致します。
研究代表者 谷口 功一